第23回日本脊椎脊髄神経手術手技学会を2016年9月16-17日に札幌で開催させていただくことになりました。本会は、診療科の枠を越えて、脊椎脊髄の手術技術の発展を目指しており、世界と同時進行を理念としています。近年の脊椎脊髄手術の技術の進歩はめざましいものがあります。私は、脳神経外科医の立場として脊椎脊髄疾患の手術に関わってきましたが、脳よりも遙かに小さな脊髄の髄内操作から、ダイナミックな脊柱再建まで、繊細さと大胆さを併せ持つ世界に魅了されてきました。手術技術は常に進化します。外科医は手術を極めたいという本能を持っています。しかし、現在行われている最先端の技術は、100年後には全く見捨てられているかもしれません。 現時点で我々はどこまで技術を極めることができたのか、それらは将来も行われる技術なのか、第23回の本会では、「脊椎・脊髄神経手術を極める」をコンセプトとして、次の8主題を設定しました。
「顕微鏡手術を極める」、「低侵襲手術を極める」 、「脊柱変形の手術を極める」、「脊椎脊髄外傷手術の工夫と革新」、「脊椎変性疾患手術の工夫と革新」、「末梢神経からみた脊椎脊髄疾患」、「新たな技術と手術支援」、「合併症・続発症を克服する」
手術用顕微鏡の導入は、脳神経外科領域では1970年代に導入され、それまでの手術を完全に変えました。脊椎脊髄外科分野では何を変えたでしょうか。低侵襲手術(MIS)は、多くの機器と技術が開発されていますが、どこまでの手術が可能となり、何が限界でしょうか。脊柱変形はどこまで矯正・固定が可能となり、中長期成績はどうなのでしょうか。高齢化社会を迎え、脊椎脊髄外傷に対する外科治療は新たな戦略が必要となったのでしょうか。高齢化によって脊椎変性疾患に対する手術は変化したのでしょうか。例えば、頚椎での前方手術・後方手術の選択は解決したのでしょうか。腰部脊柱管狭窄の手術は変わったのでしょうか。脊椎脊髄疾患症例に対して末梢神経手術の役割はどこまであるのでしょうか。未来の手術室では何が行われる可能性があるのでしょうか。さらに、新たな手術技術は新たな合併症・続発症を生じます。我々はそれらを真摯に受け止め克服しなければなりません。8主題は、これらの数々の疑問や課題のために選択しました。
外科医は個々の症例の手術から学び、進化します。症例報告を大歓迎します。8主題以外にも、多くの一般演題を募集いたします。自由な意見の交換を行い、個人の経験を共有することが、脊椎・脊髄・末梢神経手術のさらなる発展につながると考えます。9月の札幌は、秋の味覚を楽しむオータムフェストも開催され、北海道の食を十分堪能することができます。多くの皆様のご参加をお待ちしております。
2015年10月
第23回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会 (JPSTSS学会)
会長 小柳 泉 (北海道脳神経外科記念病院) |