第16回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS学会)

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第16回JPSTSS学会・学術集会の開催にあたって
 

第16回JPSTSS学会・学術集会を2009年9月11・12日に東京の都市センターホテルで開催させていただくことになりました。たいへん光栄に思っています。本学会は治療成績に直結する手術手技というものに特化したユニークな学会で、創立以来、「世界同時進行」、「整形外科と脳外科の集学」、「個人参加」の3つの理念に沿って、活発な学会活動が行われてきました。最先端の知識を世界から吸収すると共に世界へ発信し、脊椎脊髄外科医として各科の垣根を取り払って様々の観点から知識を共有し、所属部署の方針に束縛されない自由な発想から意見を出し合い成果をあげてきました。技術習得を重視し、学術集会では数多くのhands-onを行うとともに、毎年3月には実習セミナーを開き、Pedicle screwとPLIFの直接指導を行って来ました。また2年前からはパリのArgos学会との間でBest Paper受賞者の相互交換発表を行っており、これを通して世界、特にヨーロッパの脊椎外科領域とのcommunicationを一層推進したいと考えています。
最近の脊椎・脊髄外科手術の進歩は著しく、様々な手術手技や器械の開発により、少し前には不可能と思われた手技も洗練されて日常的に行われるようになっています。Instrumentの開発も著しく、世界各所で新しいInstrumentが誕生し、改良モデルが出されています。また時としてevolutionalな変化とdrasticな発想の転換があります。この時期、国内・外の情勢に遅れず、最先端の知識と技術を身につけるには、これらに接し習得する場が必要です、本学会はその場を提供し、切磋琢磨の機会を提供すると考えます。
今回の主題は、高齢手術患者の増加と医師・患者関係の対等化という最近の医療環境の特徴から、1.脊柱変形を伴う狭窄症の治療-除圧、固定、変形矯正の優劣-、2.高齢者脊椎手術の術式選択-複数病態の解決と全身予備能-、3.低侵襲手術-適応、限界、必要性-、4.脊椎手術におけるInformed ConsentとRisk Management-問題例からの反省と対策-、の4つを取りあげました。1.高齢者に多い変形を伴う狭窄症に対する治療には、構築的弱化を来さない低侵襲除圧で対処できるという意見から、完全除圧のため矯正固定術を加えるべきという意見まで様々あり、コンセンサスが得られていません。2.高齢者脊椎では通常複数の病態を有し、その全てを治療するには高侵襲の手術が必要となります。しかし手術に対する高齢者の全身予備能は低く、これに見合った手術選択が迫られます。3.患者サイドから低侵襲手術の要請は大きく、医療サイドもそれに答えるべく手技を錬磨しています。しかし無理な適応をすれば思わぬ合併症を起こします。多くの脊椎外科医がルーティーンに行う疾患や適応、限界がどの辺なのか、さらにはその必要性や客観的利点についてもまだ明確ではないようです。4.医師・患者関係ではpaternalismからinformed consentの時代へと変化し、医療の透明性と安全性が強く求められています。医療トラブルが実際の医療過誤のみならず、医師の術前説明不足、クレームへの対応不良、患者の期待と現実の結果とのギャップからも起こります。さらに患者の権利意識の膨張とマスコミによる医療不信へのあおりにより、不条理な攻撃に発展することもあり、予防と対策が必要となります。以上の4つとも最近の医療環境により診療現場で直面する問題と考え、主題とさせていただきました。多数の演題の応募と大いなる議論を期待いたします。
本学会の一般演題は毎年ユニークな発表が数多くみられ、活発な議論が展開されています。一般演題にも多数の応募をお願いいたします。
本年も海外からたくさんの演者を招き、hands-onや講演をお願いし、最先端の知識と手技の習得のお役に立ちたいと考えております。皆様の積極的な参加をお願いいたします。

 


2009年3月
第16回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS学会)
会長 佐野 茂夫
(三楽病院 整形外科)