第10回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS学会)

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第10回JPSTSS学会・学術集会の開催にあたって
 

平成15年9月26日(金)および27日(土)に第10回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会を東京都千代田区平河町の都市センターホテルにて開催いたします。
今回は第10回大会にあたり、記念すべき会の会長指名を頂きましたことを光栄に思っておりますと同時に責任の重さを痛感いたしております。私自身は脳神経外科医であり、本会の主たる構成メンバーである整形外科の先生方との関係が必ずしも十分密でなかったことを、今になってやや後悔いたしております。しかしながら本学会の設立理念は、1.世界同時進行、2.各科、特に整形外科と脳神経外科との垣根を取り払っての知識の共有、3.個人資格での参加(西島雄一郎先生 第9回JPSTSS開催にあたって より引用)と言うことであり、私のような脳神経外科医であっても、本学会に対して出来る限りの貢献を行うことが出来ればと願っております。
昨今の日本国内の情勢は厳しく、戦後の歴史的発展を支えてきた政治・経済・文化に及ぶ国内システムが全てにわたり現実のglobalな情勢変化に対応できなくなっているのではないかとの印象があります。医学・医療の世界にあっても同様であり、現今の医療保険制度下での制約・規制や、臨床よりも研究を中心としてきた日本の医科大学のあり方などに批判や反省が行われています。
このような趨勢の中で、臨床技術 特に手術手技に関する情報の交換から合併症防止対策に至るまで、フランクな討論の行える本学会は 非常に実際的であり、まさに時宜を得たものと言えましょう。現実に脊椎脊髄外科を志す若い先生方の参加と熱心な討論は本学会の特徴となっており、今後臨床技術の進歩と相まって益々発展することが期待されています。 第10回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会の主題としては、1.脊椎脊髄腫瘍の手術 2.頸椎手術手技の進歩 3.腰椎辷り症の手術 4.診療に難渋した症例の4テーマといたしました。
脊椎腫瘍の外科術式もinstrumentationを用いた脊柱再建法の進歩と共に益々radical resectionが行われるようになってきており、その経験と知識について議論することは有益であると思われます。また脊髄腫瘍手術ではmicroscopeやfunctional monitorを用いた よりfineな摘出術が可能となってきており、脊椎脊髄腫瘍の手術手技に限って議論しても、今回の学会で時間が不足するほどの様々な知見が集積されていると思います。 頸椎手術に関しましては、前方か後方かの問題とともに、最小侵襲手術による術式進歩が見られております。頸椎外科はこれからどの方向に向かうのか、最新の術式を行っておられる皆様のご参加と熱心な議論を楽しみに致しております。 腰椎辷り症に関しては脳神経外科医としては経験少ない分野であります。しかしながら近年腰椎手術の件数が増加するにつれて、辷り症を伴った症例を治療する機会が多くなっております。経験豊富な整形外科の先生方とともに、脳神経外科医の新たな臨床経験も交えて議論が行えれば幸いです。 第4のテーマである.診療に難渋した症例は、第9回の本学会から初められました企画で、学会第一日目の夕、器械展示場の一角でグラス片手に語り合うevening discussion with wine であります。第9回大会では貴重な症例の御提示を受けて、大変興味深い議論が交わされました。豊富な臨床経験を有するベテランの解説と共に、若い先生方のご意見が新鮮な刺激となり 非常に有意義な時間を持つことが出来ました。第10回の本会でも熱心でfrankなdiscussionを期待いたしております。

 


2002年9月

第10回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会
会長 高橋 宏
(東京都立神経病院 脳神経外科)